目次
1.看護小規模多機能型居宅介護とは
看護小規模多機能型居宅介護(以下、看多機)とは、ひとつの事業所で「訪問看護」「訪問介護」「通い」「宿泊」を一体的に提供する介護保険サービスです。幅広い要介護度、疾患、看取りまで対応するなど、利用者ニーズを満たすだけでなく、家族のレスパイト(小休止)や仕事との両立支援の役割も果たしています。
看多機は、一人暮らしの高齢者や老老介護の増加を受け、要介護状態になっても住み慣れた地域で在宅医療・介護を受けられるよう、2012年に小規模多機能型居宅介護と訪問看護を組み合わせた「複合型サービス」として創設されました。その後、よりサービス内容が伝わるよう、2015年に現在の名称へと変更されています。

看多機の対象者
看多機の対象者は要介護1〜5の認定を受けた人で、要支援は対象外です。地域密着型サービスのひとつに位置付けられているため、原則、居住している市区町村内にある事業所を利用します。
2025年に厚生労働省がおこなった調査によると、看多機のサービス受給者数は全国に2万3,700人(月間)おり、要介護1〜5まで偏りなく利用していることがわかります。

利用定員
看多機には利用定員が決められており、ひとつの事業所に登録できるのは29人以下です。「通い」の定員は事業所定員の半分以下、「宿泊」は9人以下とされています。また、「訪問」の定員は定められておらず、利用者の状況や希望に応じてサービスを提供します。
施設数の推移

看多機の施設数は、2025年1月時点で1,098ヶ所となっています。過去10年間で約3.7倍に増加しているものの、ほかの介護保険サービスと比べるといまだ少ない状況です。例えば、訪問介護は3万5,512ヶ所、訪問看護は1万6,720ヶ所、通所介護(デイサービス)は2万4,508ヶ所と、看多機の15〜32倍の規模となっています。
小規模多機能型居宅介護との違い
看多機と類似したサービスに、小規模多機能型居宅介護があります。主な違いは、訪問看護の有無と対象者です。小規模多機能型居宅介護は、要支援・要介護認定を受けた人を対象に、訪問介護・通い・宿泊サービスを一体的に提供しています。一方、看多機はこれらのサービスに加えて訪問看護も提供していますが、要介護認定を受けた人のみが対象です。
看護小規模多機能型居宅介護 |
小規模多機能型居宅介護 |
|
---|---|---|
提供サービス |
訪問・通い・宿泊・訪問看護 |
訪問・通い・宿泊 |
対象者 |
要介護1〜5 |
要支援1〜2、要介護1〜5 |
小規模多機能型居宅介護について詳しくはこちら
>小規模多機能型居宅介護とは?サービスや料金、人員基準、仕事内容について解説
2.看護小規模多機能型居宅介護の特徴
看多機の特徴は以下のとおりです。
サービス提供の自由度が高い
看多機は基本的に24時間365日運営しており、利用回数の制限がありません。そのため、以下の例のように、状況に応じて柔軟にサービス提供ができます。

例1
嚥下(えんげ)困難のため胃ろうを造設した利用者に対し、進行性の症状もあったことから家族では対応できず なかったため、朝晩の訪問看護と日中のデイサービスを提供することにした。その結果、家族も安心して仕事に行けるようになった。
例2
通常は日中に事業所で入浴と食事を済ませ、自宅に帰って家族が介護をしていたが、家族の急用により、急きょ通い後に宿泊を利用することになった。
医療依存度が高い利用者の受け入れが可能
医師の指示書をもとに、以下のような医療的処置がおこなえます。
- 胃ろう・気管切開
- 各種カテーテルの管理
- インスリンなどの注射
- 点滴
- 褥瘡(じょくそう)ケア など
利用者の安心感につながる
ひとつの事業所で複数のサービスを提供できるため、サービスを変えるたびにスタッフを変更したり、事業所を探したりする必要がありません。利用者は顔なじみのスタッフからサービスを受けることができ、安心感につながります。また、1事業所あたり29人以下と少人数のため、きめ細やかな看護・介護がおこなえます。
3.看護小規模多機能型居宅介護で働く
ここからは、看多機の人員基準と看護師の一日の流れ、求められる役割、給料を紹介します。
人員基準
職種 |
必要な人数 |
|
---|---|---|
管理者 |
1人(常勤かつ専従) ※看護師・保健師のいずれか、または以下を満たす人
|
|
従事者数 |
日中 |
通い:常勤換算で利用者3人に対し1人以上 訪問:常勤換算で利用者2人に対し1人以上 |
夜間 |
夜勤・宿直:時間帯を通じて1人以上 |
|
常勤換算で利用者2.5人に対し1人以上 ※1人以上は常勤の看護師または保健師 |
||
専従で1人以上 ※同一事業所のほかの職務と兼務・非常勤可 |
看多機は、日中と夜間の人員基準がそれぞれ定められています。日中のなかでも「通い」と「訪問」では配置基準が異なります。看護師は「通い」「訪問」の両サービスを兼務できます。
一方、夜間帯の職種は定められておらず、事業所ごとに必要に応じた体制を整えることとされています。
看護師の仕事内容と役割

看多機の看護師は、利用者一人ひとりの状態やニーズに応じて、訪問、通い、宿泊の各サービスを柔軟に行き来しながら支援します。
給料
ジョブメドレーに掲載されている求人(2025年5月時点)をもとに、看多機の給料を算出しました。なお、各種手当や残業代などは含みません。実際の賃金はこれより高くなる可能性があります。
平均時給 |
平均月収 |
平均年収 |
|
---|---|---|---|
看護師/准看護師 |
1,661円 |
30万3,829円 |
425万3,606円 |
介護職 |
1,238円 |
24万1,722円 |
338万4,108円 |
介護支援専門員(ケアマネジャー) |
– |
27万7,399円 |
388万3,586円 |
*年収は「月収の総平均 × 14ヶ月(ボーナスは月給の2ヶ月分)」で試算
*求人数50以上の賃金データ
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4.看護小規模多機能型居宅介護を利用する
利用の流れ

看多機は、地域密着型サービスのため、原則として住んでいる地域の事業所を利用します。ただし、住んでいる市区町村よりも隣接する地区にある事業所のほうが近い場合などは、利用契約を結ぶ前に申し立てをおこない、自治体長の同意を得ることで広域利用が認められることもあります。
また、契約前に担当のケアマネジャーがいる場合でも、看多機のケアマネジャーが新たにケアプランを作成します。
利用料金
看多機の利用料金は、要介護度に応じた1ヶ月ごとの定額制です。自己負担が1割の場合、以下のように決められています。なお、食費・おむつ代・宿泊費などの日常生活費は別途発生します。
要介護度 |
料金 |
---|---|
要介護1 |
1万2,438円 |
要介護2 |
1万7,403円 |
要介護3 |
2万4,464円 |
要介護4 |
2万7,745円 |
要介護5 |
3万1,386円 |
*2023年6月時点
*1単位10円とした場合の金額
*養護老人ホームなどの同一建物居住者以外に提供した場合の金額
5.じっくりと関係性を築ける職場
看多機は、利用者のニーズに応じて柔軟にサービスを提供できる施設形態です。医師の指示に基づいた医療処置も提供できるため、医療依存度が高い人を受け入れる体制が整っています。
要介護度や疾患の異なる利用者に対応するには、高い判断力や幅広い知識が求められます。大変さもありますが、24時間体制で利用者に接するため、深い信頼関係を築けるのが大きな魅力です。さらに、看多機では多職種との連携によって、単一のサービスを提供する事業所や職種だけでは実現できない、きめ細やかなケアが可能になります。こうした環境で専門性を発揮したいという人は、ぜひ求人をチェックしてみてください。
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管理職(介護)
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参考
- 日本看護協会|看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
- 厚生労働省|看護小規模多機能型居宅介護
- 厚生労働省|介護給付費等実態統計